WATER SCAPE

シンポジウム開催レポート 見えないインフラ「地下水」の
持続的な利用に向けて 〜地下水保全の価値を見える化し、次なる一歩を踏み出す〜

シンポジウム

企業・行政の現場では「水の確保」や「水に起因するリスク」への関心が一段と高まっています。その一方で、地域に根ざし、私たちの産業と暮らしを支える地下水は、日常の中では“見えない”がゆえに、現状把握も対策設計も後回しになりやすい資源です。
そこで本シンポジウムでは、地下水を「見えないインフラ」と捉え直すことで、企業の事業継続・地域の価値創出・行政の政策形成を前に進めるための第一歩について議論を行いました。
登壇者は、学術(地下水研究)、企業(製造業)、自治体(地域づくり)という異なる立場から参加し、ファシリテーターがその視点をつなぎながら、現場で実装可能な論点へ落とし込んでいきました。
本イベントの狙いは、結論を一つに収束させることではありません。立場が異なる登壇者が集まるからこそ、それぞれの目的、目標があることが可視化されます。一方で、「見えないインフラ」地下水の基本特性を理解することで、共通言語としてのデータの重要性を認識し、コミュニケーションが始まる状態をつくることを目指しました。

グラフィックレコーディングで
議論の内容をリアルタイムで可視化!

本シンポジウムでは、グラフィックカタリスト・ビオトープ所属の佐久間 彩記氏によるグラフィックレコーディングを用いて、講演やディスカッションの内容をリアルタイムで可視化しながら進行。
全体像の整理やキーとなるメッセージをその場で可視化することで、議論の活性化と聴講者の理解を深めることに寄与しました。

パネルディスカッションのレポートはこちら

開催概要

日程
2026年1月30日(金)
13時00分~14時30分
会場
東京ビッグサイト 南2ホール内 特設セミナー会場(Inter Aqua 2026内)
主催
Water Scape株式会社

プログラム

基調講演
「地下水を使うこと、まもること」

登壇者
東京大学 徳永朋祥 教授

パネルディスカッション
「地下水保全の価値を見える化する為に必要な取り組みは何か?」

ファシリテーター
水ジャーナリスト 橋本 淳司 氏
Water Scape株式会社 川﨑 雅俊 氏
パネラー
グンゼ株式会社 井出 啓太 氏
株式会社ホテイフーズコーポレーション 小林 伸安 氏
長野県大町市 下條 勉 氏

シンポジウムサマリー

100名を超す多くの来場者が集い、満席で盛況開催

100名を超す多くの来場者が集い、満席で盛況開催

地下水は、企業活動の“足元”を支える資源であると同時に、地域の価値そのものでもあります。しかし現場では、「見えない」資源であるため、 “なんとなくの善意”や“場当たり的な対応”にとどまってしまうことが少なくありません。
今回の議論で浮かび上がったのは、地下水をめぐる意思決定を前に進める鍵は、データに基づく現状把握と、共通言語化、そしてそれを土台にした対話にある、という点です。
登壇者たちからは、「賢く使って守る」「データに基づく現状把握」「定量評価」「共通言語」「対話」といったキーワードが明確に整理され、これらをつなぐことで“見えないインフラ”の持続的利用に近づける、という示唆が提示されました。

3つのポイント

1

「数字合わせ」ではなく、水循環理解が起点になる
単に「使った分を返す」といった数値目標は危険。地下水だけではなく地域の水循環を理解した上で、どこに、どのような質の水を、何のために返すのか考える計画が不可欠。

2

水循環理解のための「データ」は企業の意思決定に貢献する
「データ」は、企業の信頼性担保に貢献すると同時に、水に対する取り組みを「やらない」拠点を決める等の経営判断に貢献できる。

3

外部とのコミュニケーションは、水の価値を「コンテンツ」に昇華する
外部の視点を得ることで、水が生活資源から地域を活性化する「コンテンツ」に変わる、という実感が共有された。
地下水を“共通言語”にする議論が会場で白熱

地下水を“共通言語”にする議論が会場で白熱

本シンポジウムは、地下水を「守るべきもの」として語るだけでなく、事業継続・投資判断・地域づくり等に“接続できる形”で捉え直した点に特徴があります。
データがあることで、企業は取引先への説明責任や社内合意形成を進めやすくなり 、自治体は「水が綺麗です」というPRを超えて、水を地域のコンテンツへ転換する可能性を語れるようになる。
これらは、「データ」を介した多様な立場でのコミュニケーションが、地下水の価値を高める可能性を示していると考えられます。Water Scapeは、可視化をゴールにせず、可視化→共通言語化→対話→実装の循環をつくることで、地下水への向き合い方を“企業・地域価値を高める取り組み”へ変えていきます。

基調講演

基調講演では「地下水を賢く使い、まもる」ことの重要性がフォーカス

基調講演では「地下水を賢く使い、まもる」ことの重要性がフォーカス

地下水を使うこと、まもること

東京大学
徳永 朋祥 教授

基調講演では、参加者の地下水への認識合わせに向けた話題提供をいただきました。地下水を守る=使わない、となってしまいがちですが、そうではなく、「賢く使う」ことの重要性を、具体的な事例とともに説明いただきました。
地下水を利用することで、地下水に関するデータが蓄積され、社会が適切な地下水の使い方を理解できるようになる、というのはまさに目から鱗が落ちる話で、非常に印象に残りました。
また、地下水は独立した水資源ではなく、地表水と一体となった水資源であることが説明されました。その上で、近年の少子高齢化に伴い、水循環を支えてきた土地利用(例えば農業等)が衰退することで、地下水に対する影響が起こり得るのではないか、といった危機感もお話いただきました。

講演やディスカッションの内容をリアルタイムで可視化していくグラフィックレコーディング
制作者:佐久間 彩記 氏(グラフィックカタリスト・ビオトープ)

3つのポイント

1

見えない重要な資源であること
地下水は、水資源だけでなく熱資源として非常に重要であり、環境価値も持つ。

2

水循環の一部であること
地下水は独立しておらず、地表水(河川など)と相互作用する水循環の一部である。

3

人間の活動に大きく影響されること
都市化(地表の舗装)、農業(水田からの涵養)、工業(過剰な揚水)といった人間の活動は、地下水の量や流れに直接影響を与える。井の頭池の枯渇事例のように、社会として何を優先するかのトレードオフの問題が生じる。
会場内には学びの熱気が広がる

会場内には学びの熱気が広がる

徳永教授の示唆は、地下水対策を「目標設定」から始めるのではなく、現状理解→論点整理→実装設計の順に戻すことでした。
何をどこで涵養すべきか、あるいは涵養よりも汲み上げ方の管理が重要なのか——その判断を支えるのがデータであり、ここを外すと“良いことをしているつもり”が逆効果になりうる。
だからこそ、地下水の可視化は単なる情報提供ではなく、企業・行政・地域が同じ前提で議論し、意思決定を正しい順番で前に進めるための土台になるのだといえます。

パネルディスカッション

地下水保全の価値を見える化するために必要な取り組みは何か?

パネルディスカッションでは、企業・自治体それぞれの実務に引き寄せた議論が展開され、「可視化」が“あると良い”ではなく“意思決定を動かす”ものとして語られました。
企業側からは、まずホテイフーズ小林氏が「外へのアピール」よりも「足元の信頼強化」を重視する姿勢を明確にし、「私たちの工場の水は将来的にも安定している」と胸を張って説明できることが、ビジネスの信頼に直結すると述べました。
さらに、社内でも感覚ではなくデータがあることで設備投資・保全活動の合意形成が進む、という“実務の効能”が共有されました。
続いてグンゼ井出氏は、地域性を踏まえた定量的な水リスク評価によって、「水リスクが低いため、現状以上の対応が不要な拠点」も正確に把握できると説明しました。これにより、取り組みのロードマップに説得力が生まれ、経営判断につながる可能性が高まる​と述べました。​​
自治体側からは大町市下條氏が、「水が綺麗です」というPRだけでは不十分であり、外部の視点が入ることで、例えば大町での水への取り組みが“生きた教材”となり、地域を活性化する“コンテンツ”に変わる可能性が語られました。ここに企業・市民・専門家の協働を重ね、データに基づく“場づくり”を進めていく意志も示されています。
そして橋本氏は、何をしたら良いか分からない、という問いで始まった本シンポジウムに対し、最初の一歩として、水に関する共通の認識を、企業内、地域内で持つことの重要性を指摘されました。この共通認識を「共通言語」と表現し、その一つが「データ」であることを提示されました。

講演やディスカッションの内容をリアルタイムで可視化していくグラフィックレコーディング
制作者:佐久間 彩記 氏(グラフィックカタリスト・ビオトープ)

3つのポイント

1

取引先への信頼は、データで“胸を張って説明できる”状態から生まれる
「工場の水は科学的な裏付けがあり、将来的にも安定している」と言えることが、ビジネスの信頼に直結する。

2

社内の合意形成も、データがあると進む
感覚ではなくデータがあることで、設備投資や保全活動への合意形成がスムーズになる。

3

自治体側は“PR”を超えて、価値を翻訳していく必要がある
「水が綺麗です」だけでは不十分。外部の視点で、水が地域活性の「コンテンツ」に変わる可能性が見えた。
多様な立場が交わるパネルディスカッション

多様な立場が交わるパネルディスカッション

パネルディスカッションで確認されたのは、地下水の可視化が「守る」ためだけでなく、信頼(取引先・社会)や投資(社内意思決定)、価値(地域づくり)を同時に前へ動かし得る、ということです。
そのためには、単発の診断で終わらせず、長期的なトレンドとして捉え、企業・行政・地域が“同じデータを見て対話できる場”を持続させることが不可欠と考えられます。
Water Scapeが目指すのは、可視化で終わらず、共通言語化と対話を通じて、責任ある管理へつなげていくこと——議論全体の背骨として、この方向性を提示されました。

登壇者の言葉

会場で交わされた言葉の中から、
核心をつくフレーズをピックアップしました。

東京大学教授 徳永朋祥

賢く使うことが
“まもる”につながります

東京大学教授徳永朋祥

長野県大町市 下條勉

データをもとに、
企業と連携・協働しながら
地域の宝である水を、
活用しながら守っていく

長野県大町市下條勉

グンゼ株式会社 井出啓太

地域の水を定量的かつ
詳細に可視化することで、
重点領域を絞って
取り組むことができる

グンゼ株式会社井出啓太

水ジャーナリスト 橋本淳司

社内・地域内で水に関する
「共通言語」を持つことが
最初の一歩。
その一つがデータと考えます

水ジャーナリスト橋本淳司

株式会社ホテイフーズコーポレーション 小林伸安

データは事業の
信頼強化と社内の
合意形成にとって重要

株式会社ホテイフーズコーポレーション小林伸安

Water Scape株式会社 川﨑雅俊

なんとなく良いことをする、
では保全活動の継続は難しい。
データにもとづいて責任ある
管理を行うことが重要

Water Scape株式会社川﨑雅俊

地下水のことで、
こんなお悩みはありませんか?

  • 地下水利用の状況を、
    把握できていない

  • 拠点(サイト・流域)の
    水リスクを説明できていない

  • 地域や関係者と、同じ前提で
    議論できる材料がない

  • 何から始めればいいか分からない
    (観測?データ?体制?)

Water Scapeは、地下水データの見える化を起点に、
状況把握から意思決定、関係者との合意形成までを支援します。
まずは30分、現状と論点の整理からご一緒します。

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